戦略とは、あなたの会社の存在感を高めるために、限られた経営資源をどんな施策にどれだけ投資するかを決めることです。中小企業が存在感を高めるSEO戦略では、専門性に特化するか、地域に密着するか、またはその両方が有効です。むしろそれ以外に生き残る道はないと言えるかもしれません。
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戦略は中小企業にこそ必要
筆者はこれまで数え切れないほど多くの中小企業のSEOに携わってきました。さらに筆者自身もまた、自社サイトのSEOを含めて何でも一人でこなさなければならない零細企業オーナーです。こうした中で実感するのは「戦略は中小企業にこそ必要」だということです。では、そもそも戦略とは何でしょうか?
戦略とは資源(リソース)配分であり、限りある資源を何にどれだけ投資するか、また、何に投資しないかを決めることだといいます。孫引きで恐縮なのですが森岡毅氏の著書1によれば、プロイセンの将軍カール・フォン・クラウゼヴィッツ2は「戦争論3」の中で戦略を下のように定義したそうです。
戦略とは、目的を達成するために資源を分配する選択のこと。
カール・フォン・クラウゼヴィッツ
中小企業は圧倒的に資源が足りません。人手が足りず、資金が足りず、時間も足りません。少ない資源で優位に立つためには、優位に立ちやすいところに資源を集中させ、劣位に立ちやすいところには資源を配分しないようにするほかありません。資源を集中する先を見る前に、まずはSEO戦略のゴールを確認します。
SEO戦略のゴールは「存在感」
SEOで成功するのは「その市場で最も存在感のある会社」です。ある特定の市場内で、知名度が高く、評判が良く、多くの人の話題にのぼる会社(≒ウェブサイト)は、被リンクやサイテーションや指名検索を獲得し、Googleにとって無視できない存在となります。Googleは公式ドキュメントの中でSEOを次のように説明しています。
検索の基本事項に沿って作成したサイトは Google の検索結果に表示されやすくなります。SEO とは、一歩進んで Google 検索での存在感を高める取り組みのことです。
Google 公式 SEO スターター ガイド | Google 検索セントラル4
上記の引用にあるようにSEOは、Google検索が知ることのできる場所での存在感を高めていく取り組みの集合です。まとめると「SEO戦略とは、あなたの会社やウェブサイトやあなた自身が、あなたの業種や地域で目立って高い存在感を得るために、限りある資源を何にどれだけ投資するか、また何には投資しないかを決めること」となります。
専門特化か地域密着で存在感を高める
中小企業が存在感を高めていくためにできることはそう多くありません。できることは、専門分野を絞り込んで専門性に特化するか、商圏を絞り込んで地域に密着するか、またはその両方です。特定の狭い分野での存在感を高めるか、特定の狭い地域での存在感を高めるか、地域で有名な専門家を目指すかのいずれかの選択です。
豊富な品揃えと広い商圏は価格勝負の世界であり、大手や中堅の土俵です。中小企業は専門特化か地域密着かその両方で市場を絞り込み、その市場の中での存在感を高めましょう。
専門分野を絞り込む
専門分野を絞り込むとは、たとえばあなたの会社が工務店だったとしたら、工務店の業務全体の中から特に「バリアフリーリフォームなら当社にお任せ」のように特定分野を強く打ち出すことです。そして効果的なバリアフリーリフォームの方法や、補助金申請などといった関連コンテンツを配信することでSEOを実施していきます。
専門性に特化した業者であると人々に認識されれば、ウェブ上のクチコミや検索キーワードを通じて、また発信するコンテンツのトピックから、検索エンジンにも御社の専門性が伝わり、E-E-A-Tが高まり、優位にSEOを進められます。市場においても検索結果においても、御社はバリアフリーリフォームの専門業者として存在感を高めていくことができます。
実際にはバリアフリーリフォームは集客のためのフックで構いません。実際の業務内容までは絞り込まなくてもいいでしょう。あなたの商圏の人々が「戸建て建築と総合リフォームといえば御社」と想起できればいいですが、それが難しいなら専門分野を絞って「バリアーフリーリフォームといえば御社」という想起をとりにいくのです。
商圏を絞り込む
先述の例と同じくあなたの会社が工務店だったとしたら、所在する市町村の他に隣接する市町村も商圏に含めていることでしょう。これを、会社が所在する市町村だけに絞るのもいい方策です。「○○市、△△市、□□村で工務店といえば御社」という想起をとることが困難なら、地域を所在する市だけに絞って「○○市の工務店といえば御社」という想起をとるのです。
地域のイベントに協賛したり、地域に屋外サインを設置したり、地域を走るバスなどに交通広告を掲出するのもいいでしょう。サイトやSNSで発信する情報も地域に密着した内容にすれば、地域内での認知向上を後押しします。そうして地域内での認知を高めることで「○○市の工務店といえば御社」と想起してくれる人が増え、SEOを有利に進められます。
この場合もやはり、実際の商圏は隣接市町村まで含めたままで構いません。既存のお客さまが市外にいらっしゃることもあるでしょうし、クチコミが隣接市町村に伝わっていくこともあるでしょうが、それはまったく構いません。広告を含めて、発信する情報を所在地町村に限定することで、狭い地域で存在感を示すことが重要です。
専門分野と商圏の両方を絞る
地域密着の専門家として、専門分野と商圏の両方を絞るのも良策です。ここまでの例でいえば「○○市でバリアフリーリフォームといえば御社」という想起が得られるように取り組んでいくのです。ここまで絞るのは抵抗があるかもしれませんが、筆者の知る限りこの種の「想起をとるための絞り込み」で失敗した例はありません。
家電量販店やスーパーマーケットが典型ですが、取扱品目が幅広く商圏が広くなればなるほど価格勝負になっていきます。経営資源に乏しい中小企業では戦えません。一方、中小企業はこだわりの品揃えか地域密着のサービスかその両方で存在感を高めることができ、「○○といえば△△社」という想起をとることができます。
専門特化や地域密着は中小企業の武器
そもそもですが、大手や中堅は専門分野を絞ることも商圏を絞ることもできません。大手企業や中堅企業は自分自身を維持するために「何でも、どこでも」とならざるをえず、専門性も地域密着性も薄れていく運命にあります。専門特化や地域密着は、大手や中堅の企業には使うことのできない、中小企業の大きな武器です。
大手企業や中堅企業は、専門分野を狭く絞ったり、商圏を狭めて地域に密着することができません。中小企業は専門分野や商圏を狭く絞ることで、大手や中堅と差別化でき、価格競争も避けられます。
専門性に特化すればコンテンツの作成が楽になります。幅広いトピックを扱う必要がなくなるからです。また地域に密着すればローカルSEOが楽になります。その地域に関連の深い投稿者によるクチコミを集めやすくなるからです。そして何よりも、専門特化や地域密着によって「○○で△△といえば御社」という想起を獲得しやすくなります。
まとめ
SEOは存在感を確立する勝負です。存在感の高い状態とは、あなたの社名やサイト名やブランド名が話題にされ、評判が高まり、指名検索される状態です。中小企業であれば、専門性か地域性かまたはその両方に特化することで、認知されやすくなり、記憶されやすくなり、その市場での存在感を高めやすくなります。
特定の分野で、または特定の地域で、勝る場所を見つけましょう。あとはその分野または地域での想起を取れるように、広告やコンテンツ発信をしっかりやっていくだけです。この戦略は中小企業だけが採用できる弱者の戦略で、中堅以上の企業は手を出すことができません。今日からでも検討を開始してください。
なおご注意いただきたいことがあります。専門性に特化する話をすると、自社の業務を細分化してそれぞれの専門サイトと称するものを乱立させる人が必ず出てくるのですが、専門性に特化するとはそういうことではありません。あなたの会社の存在感を実際に高め、実際に想起されるようになることが目標ですから「会社全体として何を打ち出すか」と考えなければ無意味です。