検索エンジン スパム(Search Engine Spam)についての解説。不正な方法でロボット型検索エンジンを攻略し、検索結果の上位を得ることを「検索エンジン スパム」といいます。こうした行為は、検索結果からの除外のようなペナルティを受ける可能性があるだけでなく、ウェブの汚染につながるため、絶対に避けなければなりません。
目次
検索エンジンスパムの定義
残念ながら「何がスパムで、何がスパムではないのか」ということについては、それぞれの検索エンジンのその時の内部基準によって判定されるものであり、ペナルティの発動やその条件なども一定しません。したがってウェブマスターは「疑わしいことはしない」というポリシーで臨むしかありません。
しかし一般に知られているスパムについての定義もあり、それを指針として利用することもできます。検索エンジンスパムについて最もよく使われる定義はe-Brand ManagementのChief Technology Officer、Alan Perkins による次のものです1。
- 検索エンジンスパムに該当すること
- ロボット型検索エンジンの適合度を計算する能力に影響を及ぼすあらゆる人為的な試み。
- 検索エンジンスパムに該当しないこと
- 検索エンジンが存在しなかったとしても同じように行われ続けること、または検索エンジンが行うことを許可していること。
上記定義の「検索エンジンスパムに該当すること」は少々極端なもので、これだけで定義を完結するには不十分で厳しいものです。というのは、検索エンジンはウェブページの内外のあらゆる要素から適合度を計算するため、ウェブページはそれ自体が検索エンジンの適合度を計算する能力に影響を及ぼす人為的な試みの集合であるからです。
そこで次の定義「検索エンジンスパムに該当しないこと」を除外する必要があります。この「検索エンジンスパムに該当しないこと」の中で述べられている、「検索エンジンが存在しなかったとしても行われ続けること」という定義は非常に示唆に富んでいます。
例えば、隠しテキストや隠しリンク、クローキングなどは、人間の閲覧者に見せることを目的とせず、検索エンジンにだけ読み込ませることを目的としてキーワードを配置するテクニックです。このようなテクニックは「検索エンジンが存在しなかった」場合には当然使われ続けることはありませんから、明確にスパムとみなすことができます。
スパム行為の具体例
Googleウェブ検索のスパムに関するポリシー2には「品質に関するガイドライン」として、スパム行為の具体例がいくつか示されています。これについて以下にまとめます。
企みを持ったリンク組織に参加しない
- リンクポピュラリティや検索順位を組織的に上昇させようとする計画に参加しない
- 過剰な相互リンクをしない
- 有料リンクを購入しない・販売しない
- 組織的なリンクを持っているサイト(リンクファーム参加サイトや有料リンク販売サイト)にリンクしない
隠しテキスト、隠しリンクを使用しない
- ユーザーには見せずに、検索エンジンにだけ読み取らせることを意図したテキストやリンクを配置しない
- 背景と同色のテキストやリンクを使用しない
- 小さな画像やハイフンなどの記号に設定されたリンクを使用しない
- 画像で覆われたエリアや表示エリア外に大量のテキストを記述しない
クローキングを行わない
- UAやIPで判別して、ユーザーに見せる内容とは異なる内容のページを検索エンジンのロボットに対して表示することはしない
JavaScriptを悪用しない
- 実際のJavaScriptの動作とは異なる内容をnoscript要素内に記述しない
- ユーザーを検索結果に表示されたページとは別のページにリダイレクトする目的でJavaScriptを使用しない
ドアウエイページを使用しない
- 別のページへのリダイレクトを目的として、特定のキーワードやキーフレーズにだけ最適化された内容のないページを作成しない
キーワードを詰め込まない
- リストやパラグラフの中で特定のキーワードを過度に繰り返し使用しない
- 隠しテキストの中にキーワードを詰め込まない
- title属性やalt属性の値の中にキーワードを詰め込まない
内容の重複したページを公開しない
- 検索エンジンの順位を操作する目的で、同じか類似の内容を持ったページを複数のドメイン・サブドメインで公開しない
- まったく同じ内容で、キーワードだけが異なるページを公開しない
スパムとペナルティ
悪質な検索エンジンスパム行為が発覚した場合、そのような行為を行ったページは検索エンジンからペナルティを課されることがあります。各検索エンジンは、それぞれの独自の基準に則ってスパムサイトを自動的に判別し、または担当者の手動で、該当するサイトにペナルティを課します。スパムに対するペナルティとは、具体的には以下のようなものです。
- 検索結果での降格
- それほど悪質なスパム行為でない場合の措置で、単に検索結果リストの上位に表示されなくなる。最下位付近まで表示順位を落とすこともあれば、緩やかに表示順位を下げることもある。
- データベースからの削除
- 悪質なスパム行為を行った場合、次回のクロール時からクロール対象リストから除外され、データベースから完全に削除される。ページやディレクトリ単位の場合もあれば、ドメインごと削除される場合もある。
ただし現状(2016年以降)では、明らかにペナルティを受けているケースは非常に稀なものになっています。検索エンジンが賢くなり、スパム行為の大半を無視できるようになったことを受けて、ペナルティをスパムの抑止力として使用する必然性が下がったからです。現状では不自然な順位低下があった場合、ペナルティではなく実装上のミスやセキュリティ上の脆弱性であることがほとんどです3。
また運悪くペナルティを受けた場合でも、Googleスパムポリシー違反ペナルティの解除方法に従って作業を進めることで、ほぼすべてのペナルティは解除可能です。この点からも、現状ではスパムについてそれほど神経質になる必要は大きくないと言えます。ただし、悪質なスパムを発見した場合には検索エンジンに報告することもできます4。
まとめ
検索エンジンが賢くなった現在では、検索エンジンスパム行為のほとんどは単に無視され、加点も減点もされないことが多くなってきています。これを受けて、露骨なスパムサイトが検索結果の上位に表示されることはまずなくなったため、ウェブマスター側からも検索エンジンスパムに手を染める動機は失われています。
悪意のある検索エンジンスパム行為を巧妙に実施したとしても、リスクとリターンは見合いにくいのが現状です。一般のウェブマスターにとってはもはや、検索エンジンスパムは過去のものになったと言ってよいでしょう。「疑わしいことはしない」という点だけに注意して自分自身でSEOを実施すれば、検索エンジンスパムについての対応は十分です。