指名検索とは、ショップ名や会社名やサイト名、商品名などのブランドキーワードを含む検索のことをいいます。Googleは指名検索されるブランドを、実際の人々によく知られ、関心を持たれているブランドであると理解し、順位を向上させます。サイト名や社名のブランディングでSEOを効果的に進めましょう。
目次
指名検索とは?
指名検索とは、ショップ名や会社名やサイト名、商品名などのブランドキーワードを含む検索のことをいいます。指名検索には、[ナイキ]のようにブランド名だけで検索する場合と、[ナイキ+バスケットシューズ]のようにブランド名と一般名詞を組み合わせて検索する場合があります。
Googleは検索結果において、大手マスメディアや大手メーカー、大手ECサイトなど、大手ブランドを優遇する傾向があります。その一方で、無名のECサイトやアフィリエイトサイトの冷遇は加速しているように見えます。この違いを生んでいる重要な要因の一つが「指名検索の有無」です。
知名度と関心度の反映
指名検索をするのは、ショップ名や会社名やサイト名などのブランド名をすでに知っている人々です。その人々は、そのブランドに関心があり、購入の候補にしているか、またはもっとよく知りたいと考えていることが強く推察されます。指名検索の多さは、そのブランドの知名度の高さや、関心を持つ人の多さを反映しています。
2012年以降、Google検索はエンティティを理解するようになりました。このことは、検索されているブランドが注目されている重要なエンティティであることを理解できることを意味しています。私たちは社名やサイト名や店名を、よく知られ、信頼され、指名検索されるブランドに育てる必要があるのです。
Googleの特許から
Googleの2012年の特許「Ranking search results1」には、指名検索を特定のリソースを指し示す「暗示的なリンク(implied link)」として扱い、通常のリンクと同じように順位決定要因として扱う方法が示されています(下図)。あるページに対する通常のリンク数と指名検索数を使って、そのページの順位を修正するというものです。

通常のリンクは特定のURLを指し示すもので、Googleはこれをリンク元のページからリンク先のページへの一種の支持投票のように扱います。指名検索もリンクと同様に特定のURLを指し示すものであるため、それを検索ユーザーによる一種の支持投票のようなものとみなし、リンクに準じる「暗示的なリンク」として扱う、というのがこの特許の要諦です。
これはあくまでも特許に書かれていた内容であり、実際の検索システムにそのまま実装されているとは限りません。しかし様々な状況証拠から、指名検索を被リンクのように扱うというアイデアは何らかの形で実装されているものと考えられます。次項で示すように、検索結果には相関が現れているためです。
検索順位との相関
検索エンジンにとって指名検索は、検索の対象となったブランドが本物のブランドであることを示す強力なシグナルとして機能します。指名検索を感知した検索エンジンは、そのブランドが人々に実際に知られていて興味を持たれている本物のブランドであることを理解し、そのブランドの公式サイト全体の検索順位を上昇させます。
米Mozのトム・キャッパー氏は2017年のブログ投稿2で、指名検索数と検索順位に相関があることを明らかにしました。そこで述べられていたことは、被リンクよりも指名検索数のほうが検索順位をよく説明するということでした。サイトの検索順位は、被リンクとの相関よりも指名検索との相関のほうがより強かったのです。
筆者のクライアントの中には、ある特定の分野で一定の知名度を持つ非常に小規模なECサイトがあり、その特定の分野の検索結果では少なくとも5年以上にわたって常に上位をキープできています。このサイトでは、全検索流入の数パーセントを指名検索によるものが占めています。限定された分野におけるブランドが確立しているのです。
指名検索のないサイトの順位下落
米PureLinqのケビン・ロウ氏がSearch Engine Landに寄稿した2024年7月2日の記事3によれば、Googleの2024年3月のコア・アップデート以降、指名検索を獲得しているサイトの順位が向上した一方で、指名検索を獲得していないサイトの順位が大幅に下降したといいます。この記事でケビン・ロウ氏は次のように述べています。
2024年3月のコアアップデートにより、指名検索はSEOの必須要件に近づいた。これは検索における継続的なトレンドである。
ケビン・ロウ
近年のGoogle検索では、検索結果において大手サイトが優先されやすく、小規模なサイトは苦戦を強いられやすい傾向が顕著です。この理由をシンプルに言えば「人々に信頼され指名検索を得ているサイトはGoogleにも信頼され、指名検索のないサイトはGoogleに信頼されない」ということです。サイトの規模の問題ではない可能性は大です。
筆者が知っている例でも、指名検索ではない一般キーワードのSEOだけで検索流入を得ていたあるアフィリエイトサイトが、2023年10月のコア・アップデートで大幅に検索流入を減らし、その後も徐々に流入を減らし続けていました。私たちは早急に、自社のサイト名や社名や商品名や著者名をブランディングしていく必要があるでしょう。
指名検索のSEO効果
Googleは指名検索を受けていることがそのサイトの順位向上に直結するとは公表しておらず、先述した特許の内容がそのままの形で実装されている確証はありません。とはいえ、順位向上に直結するかどうかはともかく、間接的にサイトの順位向上に寄与することは、次のことからも説明できます。
ユーザー行動シグナルの改善
Google検索上でのユーザー行動は匿名化されて集計され、検索結果に反映されます。検索エンジン上での理想的なユーザー行動は、検索結果に表示されたリンクをクリックし、その移動先のページで検索意図が満たされて検索を終えることです。そのようなユーザー行動が多く見られるサイトは、検索結果の順位が上昇します。
指名検索は、そのサイトまたはそのサイト内の特定のページに訪問するというナビゲーショナルな検索意図であることが多いため、検索結果上でのクリック率が高く、検索結果に戻る率は低くなるなど、理想に近い行動をとるユーザーの割合が高くなります。この結果、指名検索の多いサイトはユーザー行動シグナルが改善し、検索結果の順位が上昇します。
ユーザー行動シグナルはGoogleをはじめとする検索エンジンの最重要のシグナルです。指名検索と検索順位の相関については、このユーザー行動シグナルが最もよく理由を説明するものと筆者は考えます。
ブランドのE-E-A-Tの証明
Googleが2019年に発表した白書「Googleはどのように偽情報と戦っているか4」によれば、Googleのランキングシステムは、E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼)の高いサイトを特定するために特別に設計されているといいます。そして指名検索は、E-E-A-Tの高いサイトを特定する方法のひとつとして機能します。
指名検索が発生することは、その分野での知名度があることや、特定のユーザーに信頼されていることの証明です。また指名検索は、オンラインまたはオフラインのどこかでそのブランドについての言及や評判を見聞きして興味を持った結果としても発生し、この場合はそのブランドが言及や評判を持っていることを証明します。
一般キーワードでの順位向上
先述したユーザー行動の改善やブランドのE-E-A-Tの証明の結果、指名検索を得るサイトは指名キーワードを含まない一般キーワードだけでの検索でも順位が向上します。そのサイトが扱う特定の分野について優れた体験を提供し、人々に支持され、関心を集めているサイトであると認識されるためです。
たとえば、普通名詞と指名キーワードを組み合わせた [バスケットシューズ+ナイキ] のような検索が増加すると、検索エンジンはナイキがバスケットシューズのブランドとして消費者に信頼されていることを理解し、単に [バスケットシューズ] と検索したときの上位にナイキのページを表示するようになります。
指名検索を増やすためにできること
ユーザーが指名検索する状況は、おおまかに2種類が考えられます。ひとつは、すでにそのブランドを知っていてナビゲーショナルクエリとして検索するケースです。もうひとつは、テレビや雑誌などの他媒体や、ディスプレイ広告や動画広告やSNS広告などのウェブ広告を見て、またはSNSやブログなどで他の人の投稿を見て、気になって検索するケースです。
ナビゲーショナルクエリとしての指名検索も、どこかで目にして気になって検索する指名検索も、それらを増やすための働きかけが可能で、それによって検索結果での順位を向上させることができます。その反面、指名検索を獲得するための施策を打っていなければ、前項で述べたようにコア・アップデートに対して脆弱で順位の下落を引き起こしやすいサイトになってしまいます。
打ち出すブランド名を絞り込む
大手自動車メーカー並みの大企業なら、一社で複数のブランド名を持ち、それらのすべての認知度を高めていくこともできるでしょう。しかし中小企業にとってその選択はあり得ません。覚えてもらいたい、話題にしてもらいたいブランド名をできる限り少数に絞り込む必要があります。社名、製品名、屋号、サイト名など、様々なものを使い分けているなら統合を検討しましょう。
よくある間違いは、複数の屋号で複数のサイトを運営していたり、製品ラインごとにブランド名をつけていたり、社名と店名とサイト名がすべて違っていたりするものです。ブランド名が2倍に増えれば、覚えてもらい話題にしてもらう労力も2倍です。すでに知られているものか、人々にとって覚えやすく話題にしやすいブランドに統一するのが得策です。
サイト名や店名などのブランド名を無駄に増やしている例は本当に多く見かけます。ブランディングのために使える経営資源が限られている中で、複数のブランドに経営資源を分散させるのは非常にもったいないです。
ブランドのエンティティを認識させる
そもそもそれが指名検索であることをGoogleが理解するためには、そのキーワードが特定のエンティティを指していることをGoogleが知っている必要があります。会社や店や商品や人物やサイトなど、指名検索の対象となる事物のエンティティをGoogleに理解させることが最初の一歩です。
Googleが会社や店や商品や人物やサイトなどのエンティティを重要なものとして理解するためには、ニュースサイトや各種ソーシャルメディアなど、外部ウェブサイトから言及されることが不可欠です。また会社や店であれば、Googleビジネスプロフィールでクチコミを集めることも有効です。基本的なブランディングに取り組みましょう。
会社名やサイト名などのブランド名は、他と重複しないユニークなものであることが重要です。加えて、覚えやすく入力しやすいものであればより言及しやすいでしょう。一般名詞やその組み合わせのブランド名や、長すぎて覚えにくいブランド名、入力しにくい外国語のブランド名などは損をします。
ブランド名が目に触れる機会を増やす
オンラインやオフラインの広告でブランド名の露出を高めたり、SNSで人々の話題になることでも「たまたま目にしたブランドが気になって検索する」という指名検索を増やすことができます。広告を含めた話題作りは有効な施策です。社長が前面に出て広報活動や社交に取り組むのもいいでしょう。
- 広告の活用 — オンラインやオフラインの広告を利用してブランド名の露出を高める。
- SNSの活用 — SNSで話題にしてもらえるように、会話に参加したり、話題づくりを実施する。
- 広報の活用 — ニュース性のある話題を提供することで、マスメディアや各種メディアに取り上げてもらう。
- 社交の活用 — 社長がイベントや会合など人の集まる場所に出席したり、そうした場での役割を引き受けるなどして、社長の名前や会社名などを覚えてもらう。
ブランド名を目にする、または耳にする人が増えれば、それにしたがって話題にしてくれる人も増え、指名検索は増えていきます。自社や自社の商品や自分自身に合った知名度向上策を実施していきましょう。SEOにおいては、知名度の向上とそれにともなう指名検索の増加は、被リンクの構築と同じように重要です。
指名検索する理由を作る
たとえばあなたは、AmazonやYoutubeのサイトに行くために指名検索することがあるでしょう。場合によってはより具体的な目的を持って「Amazon + ヘッドセット」や「Youtube + 窓掃除」などと検索することもあるでしょう。これらも指名検索です。ユーザーにとっての「そのサイトを検索する理由」を自社のサイトに用意することは、指名検索を得るうえで重要です。
一例として、既存の顧客向けのサポート情報を充実させておけば、製品の使い方やメンテナンス方法を知りたい既存客が「製品名 + 手入れ」のような検索をしたり、サービス内容を知りたい既存客が「会社名 + 修理費用」のような検索をしてくれるでしょう。こうした既存客の検索行動はSEOにおける加点要素となり、新規客の集客につながります。
まとめ
指名検索の獲得がサイト全体のSEOに寄与するということについては、Googleからの公式の発表はなく、世界のSEO専門家が信じる状況証拠に過ぎません。しかし、よく知られ、人気や話題性があり、信頼されているブランドが多くの指名検索を集めることは事実で、Googleが検索結果において強いブランドを優遇する傾向があることもまた事実です。
筆者のクライアントでも、知名度の高いブランドを持ち指名検索を多く受けとっているクライアントは検索流入が安定している一方で、一般的なキーワードによる検索だけに頼ったSEOで流入を大きく減らしてしまったクライアントもいます。指名キーワードを含まない一般キーワードだけに頼ったSEOは非常に脆弱です。この意味で、Googleの次の表現は示唆的です。
検索の基本事項に沿って作成したサイトは Google の検索結果に表示されやすくなります。SEO とは、一歩進んで Google 検索での存在感を高める取り組みのことです。
Google 公式 SEO スターター ガイド | Google 検索セントラル5
上記の引用にあるようにSEOとは、Google検索が知ることのできる場所での存在感を高めていく取り組みの集合です。これは言い換えれば、SEOとは、人々からよく知られ、言及され、リンクされ、検索結果上で優先的に選ばれ、指名検索されるようなブランドに育てていく取り組みであると言えます。指名検索は、様々なブランディングの結果として得られるものです。
- 複数のブランドを使い分けるのではなく、ひとつのブランドに集中する。
- ブランド名は短く、読みやすく、覚えやすく、入力しやすく、他と被らないユニークなものにする。
- オンラインおよびオフラインの広告を活用し、ブランド名の認知を広げる。
- 話題づくりと広報活動によって、人々の話題にのぼるように仕掛ける。
- オンラインのSNSやオフラインの社交を通じて社長の存在感を高める。
上記のようなものが有効な策になるでしょう。もちろん、ここで言っているブランドとは、ロゴやコーポレートカラーやタグライン、またはブランドガイドラインなどのことではありません。ある特定の地域や分野で実際によく知られ、実際に信頼され、頻繁に言及され、実際に選ばれている、存在感のあるブランドのことを言っています。
ブランディングは重要な経営課題であり、経営陣や顧客の関与が欠かせません。社長自らが積極的に動きましょう。その特定のサイトを訪れる理由となる固有の価値を提供し、他のサイトやSNSで社名やサイト名や著者名に言及される状況を作りましょう。特定の地域や分野での存在感を高めましょう。簡単なことではありませんが、すぐにも始める価値はあります。
脚注
- US8682892B1 – Ranking search results – Google Patents ↩︎
- Rankings Correlation Study: Domain Authority vs. Branded Search Volume – Moz ↩︎
- Why are so many affiliate sites losing organic traffic? | Search Engine Land ↩︎
- How Google Fights Disinformation(PDF・英語) ↩︎
- Google 公式 SEO スターター ガイド | Google 検索セントラル ↩︎